その場に講師がいなくても学習はできる
青少年ネット問題の低年齢化に伴い、この数年間で、新たに学習を求められるようになる専門職の範囲も広がっています。具体的には、未就学児の動画閲覧やゲーム利用について、保護者の悩みや不安の解決を支える立場となる、保育士や幼稚園教諭、保健師といったみなさんのことが、すぐに思い浮かびます。
そうした専門職として、最近注目を集めている制度の一つに、家庭教育支援員があります。
これは、都市・郊外・農村部を問わず、全国各地で家庭と地域のつながりが大きく変わりつつある中、文科省が地方自治体を後押しする形で進めているものです。ただし、活動の活発さは地域ごとの差が大きいため、その名前への馴染みは、ある方と無い方に大きく分かれるかもしれません。
わたくし自身はこれまでも、秋田県の家庭教育支援チームのみなさんとのご縁が深く、研修会などで何度かご一緒させていただいています。今年度も湯沢市、能代市の家庭教育支援チームの皆さん向けのリモート講座を実施中です。
そんな中、今回、お手伝いの機会を新たにいただいたのは、茨城県の家庭教育支援員のみなさん向けの研修会です。
茨城県内市町村の家庭教育支援事業の特徴の一つは、「届ける家庭教育支援」とでも呼ぶべき訪問型の家庭教育支援です。「次年度小学校に入学する子どもがいる」「外国籍の保護者がいる」のように、支援の必要性が高いタイミングや、地域から孤立しやすい属性の家庭を重点対象とするなど、市町村ごとに様々な取り組みが行われているそうです。そうした取り組みを支える訪問型家庭教育支援員養成研修会を、これまでも県が年に3回のペースで開催してきたといいます。
その中で、今年度の3回目の研修会は、全県での集合型ではなく、予め収録した動画および紙教材を用いて、市町村ごとに開催することとなり、その両者の企画、制作を小職にて承ったというわけです。
研修会全体はおおよそ1時間程度で収められるようにしたいとのご意向でしたので、県のご担当者様と打ち合わせの上、15〜20分程度の動画を視聴した後、グループワークを行い、動画の続きを再び視聴して、またワークという組み立てで、教材と動画を作成しました。
その場に講師がいなくても、動機づけや、協同相手次第で、効果的な学習はできるのです。
研修会全体のテーマは「子どものネットやゲームに悩む保護者の支え方を考える」になりました。動画の前半では「子どもたちのネット利用の現状と課題」、後半では「訪問型家庭教育支援員に求められる保護者支援とは」という内容でお話をさせていただきました。
実はこちら、まだ市町村担当者様向けの伝達研修が終わったばかりで、各市町村での研修会が本格化するのは今月下旬からとお聞きしています。動画を視聴する自学自習に加え、他の支援員との交流が加わるスタイルの研修会ということで、きっと何か新しい気づきが得られ、家庭教育支援の業務にも役立てていただけるに違いないと期待しています。
インターネットの普及に加え、新型ウイルス禍への緊急対応ということで、オンライン型の研修会が急に増えた今年度でしたが、今回の茨城県さまのような取り組みで具体的な成果やその利点が認められれば、来年度以降も新しい挑戦をされる自治体が続くものと考えます。
貴重な機会を与えていただいた茨城県教育委員会生涯学習課のみなさまには、この場を借りて改めて感謝を申しあげたいと思います。
また、こうしたお取り組みをこれからも支えられるように、「ネットと子育て」に関連する研修プログラムの企画や動画制作の力を、高め続けたいと思います。