「うまくいかない」ことを出発点にする方が「うまくいく」不思議
過日、北海道新聞の教育欄に「LINEいじめ、後絶たず」との見開き記事(全文閲覧には会員登録が必要。インフォグラフィックの部分はどなたでもご覧いただけます)が掲載されました。
とはいっても、主題としてのネットいじめについての解説ではなく、「そもそもオンラインコミュニケーションには難しさがある」という部分にて、小職コメントを複数再録いただいたところです。
同記事を執筆された矢野旦記者には、対面にて(笑)丁寧に取材をしていただきまして、「なぜLINEでのやりとりがうまくいかないのか」の背景として、いわゆるCMC(Computer-mediated communication:デジタルデバイス越しでのやりとり)場面での人間の心理や行動の変化
- 判断の手がかりである非言語情報(表情や声など)が欠けるため「伝わりにくい」
- フィードバックの手段が限られており「満たされない」
- 対人不安を感じにくいため「行き過ぎる」(脱抑制)
を軸にお話ししたわけです。
このCMC場面(対比的にFace to Face:対面場面)というのは、以前から社会心理学などではごくありふれたトピックであり、小樽商大の担当講義でも毎年触れ、「個々人の努力はもちろん必要だけど、人間側に限界があることをよく理解して使う(使わない)必要がある」と、学生のみなさんにもお伝えしているところです。
ただし、ここは案外、大人でも言語化できていない点ではないかと考えております。
もちろん経験的には気づいているので、メールやメッセンジャーで込み入った話題を深追いする人は少ないわけです。ごく当たり前のことのように思ってしまっているので、子どもたちがLINEを含むオンラインコミュニケーションを始める時に、それを明示的に伝えてあげていない。「うまくいかないよ」「仲のいい友だちほどモメることになるよ」を出発点に、「ではどうするべきか」を話し合うことが大切なのに。
それが、小学校高学年から中学校1年生くらいまでの期間に、「本来は必要のないコミュニケーショントラブル」が多発してしまう大きな要因ではないのか。
もちろん、いじめのツールとしてLINEなどを意図的に使うというのは、その先にある話で、そちらはまた別の対応を考えないといけないわけですが。
そんなことを保護者向け、教員向け、支援者向けの研修会では強調しているところなので、今回の記事でそこを取り上げていただいたのはとてもありがたいことでありました。