「ネットは危ない。でも、使わせないわけにはいかない。」――徳島で講演してきました

写真提供:株式会社あわわ

 「ネットは危ないから、子どもにはなるべく使わせたくない」
大人であれば、そう思うのは自然なことです。でも現実には、宿題も、友だちとのやりとりも、日常の楽しみも、どんどんオンラインに移っていて、使わせないという選択肢はもはや現実的ではありません。

8月1日、徳島市内で開催された「青少年育成フォーラム」(主催:徳島県青少年対策本部)で、そんなジレンマに向き合うための講演をさせていただきました。

タイトルは「安心安全な青少年のネット利用のために――子どもが知るべきこと、大人がすべきこと」。地域で子どもたちを見守る方々や教員、保護者が会場にてご参加。加えて県内外のみなさんにYouTubeライブでもご視聴いただきました。

子育てが難しくなった時代

講演ではまず、青少年のネット利用トラブルの実際について確認しました。いじめや誹謗中傷、性被害や詐欺、長時間利用や課金トラブル、そして偽情報への接触など――。

問題は多岐にわたりますが、なかでも性被害については、男子の被害も決して少なくないこと、小学生の割合が年々増えていることを、警察庁の最新データをもとに紹介しました。

こうしたトラブルが「ゼロにならない理由」はそう単純ではなく、複合的です。

その一つとして、本来なら段階的に子どもが出会うはずの“社会との接点”が、インターネットによって一気に開かれてしまっているという環境の変化があります。

知識も判断力も未発達な段階で、強い刺激や悪意ある大人からの誘惑にさらされる。しかもそれが「外に出かけた時」ではなく、「家庭の中」に持ち込まれている。周りの大人からは子どものことが見えない。――これは、昭和の子育てとはまったく異なる状況です。

「アホじゃない」けど、「ほっといて大丈夫」でもない

子どもは、自分が損することや怖いことは、本当は避けたいと思っています。
決して「アホじゃない」のです。わたしたちはその点において、子どものことをもっと信頼してよいのです。

でも、「何が危ないのか」「どうすれば避けられるのか」が大人にも見えにくい・学びにくいのが、ネット利用です。社会経験が短い子どもにとってなおさらです。他のこととは違い、周囲の大人が子どものネット利用から目を離さず、ちょうどよく支えることが大切になります。

最初は「大人がリーダー」である必要があります。寝る時間、遊びの時間、ネットの時間。その“バランス感覚”は、自然にできあがるものではなく一緒に作っていくのです。

たとえば「ゲームは8時まで」とルールを決めたとき、それを子どもが一人で守れると考えるのは大間違い。楽しいことを途中でやめるには、練習が必要です。大人には、よいお手本になることはもちろん、「おしまいの後に何をするのか」を一緒に見つける工夫が求められています。

否定から入ると、手助けのチャンスを失う

小学校高学年にもなると、「大人はフォロワー」へと役割を変える必要があります。子どもがネット上で「好き」「楽しい」と思っていることを、“受け止める”ための努力が必要な段階の始まりです。

子どもは本来、自分が好きなユーチューバーのことや、ゲームのことを大人に話したくて仕方がないのです。でもせっかくのそのシグナルは、見逃されがちです。

大人も忙しい。そもそも子どもが夢中になっているものが、バカバカしく見えるからです。
そして「そんなことより宿題をやりなさい」「外で遊びなさい」「早く寝なさい」と全否定の声がけをしてしまう。

でも、自分の好きなことを否定しかしてこない相手に、相談したり、助けを求めたりするでしょうか?
保護者の立場から「ムムム?」と感じることも、時にはあるでしょうが、いまどんなことを楽しんでいるのかを最低限受け止めるためには、子どものネット利用を上手に観察し、自分でも調べてみることが欠かせません。

そして大事なのは、ネット利用で「トラブルは起こるものだ」という前提に立ち、それを子どもにも伝えること。“自分一人で解決する力”よりも“助けを求められる力”を、子どもとの、そして大人同士の“つながり”を優先させる姿勢こそが、ネット利用の安全につながる――それが今回の講演を通じて、最もお伝えしたかったことでした。

徳島での出会いに感謝して

当日は猛暑のなか、たくさんの方に足を運んでいただきました。講演中もみなさんたくさん頷きながら聞いてくださいました。終了後には、ふだん少年補導などされている方から「ネット以外の遊びなどで、自分にも子どもを支えられるとあらためて感じられた」という心強いお声も直接いただき、とてもありがたく思っています。

ネットは、これからも子どもたちの日常に浸透し続けるはずです。
だからこそ、大人の学び直しが必要です。
今回の徳島での経験を、これからの活動にもしっかりと活かしていきたいと思います。

※当日の会場での配布資料PDFをこちらからダウンロードしていただけます。

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