平成の「◎◎◎に子守りをさせないで」

本コラムは、子供とネット×平成の振り返り 16日目の記事です。
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Photo by Kelly Sikkema on unsplash.com

長すぎる前書き(わたくしとネット×平成の振り返り)

「子どもとネット」と「平成の振り返り」をかけ合わせてなにか書いてみな、と子供とネットを考える会のお二人からお誘いをいただき、勢いで引き受けてしまったものの、冷静になって考えてみると、昭和が平成に変わった時点では、まだ、子どもはネットと関係なく生きていたはずだよなぁと思います。
なのでまずは「わたくしとネット」×「平成の振り返り」でウォーミングアップ。

わたくしの場合、学校を卒業して社会人になった平成2年(1990年)に、JUNETの話を上司から熱く語られたのが、ネットというものを意識した初めての経験です。

翌1991年からは、UNIXワークステーションで動くDTPシステムの営業をしておりましたので、同世代の中では、割と早くからインターネット(的な何か)を身近に感じることができたのではと思っております。

とはいっても、自宅からインターネットにアクセスできるようになったのは、たしか1994年に小さなMac(Color Classic II)を購入してから、という記憶ですから、なんだかんだで早くも遅くもないネットデビューなんでしょうね。

その後、転職などもして、いつしか青少年のインターネット利用問題に、毎日深く関わるようになっていたわけで、ホントに人生は分からないものです。

その「青少年ネット問題」、初めの頃は高校生が主役だったはずなのに、あれよあれよと中学生〜小学生へと、子どものネットデビューが年々早まっているのは、みなさんご承知の通りです。この数年は、ついに未就学の保護者向けへの情報提供が必要な状況です。

その過程で出会ったのが日本小児科医会さんの「スマホに子守りをさせないで」(リンク先はPDFです)という、わたしにとっては衝撃的なキャッチコピーでした。

なるほど。
小さな子にスマホを見せている保護者、時々見かけるよなぁ。


でも、昭和後期生まれのわたくしは、「テレビに子守りをしてもらった」世代です。
テレビとユーチューブ、そんなに違わないんじゃないの?と思う保護者の方が多いのもよく分かります。

もちろん、実際には違うところが多いのです。その具体的な違いについては、こちらの記事(「ネット動画とテレビの違いを知ろう」)などをお読みいただければと思います。

とはいえ、今日はせっかく「平成の振り返り」がお題なので、「子どもとネット」をいったん離れ、「子どもとテレビ」についての調査研究結果(平成22年度厚生労働省科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業『幼児健康度に関する継続的比較研究』(日本小児保健協会)リンク先はPDFです)を眺めていきたいと思います。しばしお付き合いくださいませ。

平成時代の子どもの生活とテレビ

短いようでいろいろな変化があった平成時代。子どもの生活時間や、子どもを取り巻くメディア環境には、どんな変化があったのでしょうか。

まず生活時間から。

もっとも気になる睡眠について、子どもの就寝時間の経年変化を見てみましょう。
4歳児および5-6歳児の寝る時間についての、およそ40年間の変化です。




中央値は21時で不動です。
(ただ、21時就寝だと米国睡眠医学会の推奨睡眠時間数には足りなそうですが…。)

全体としては、平成直前の1980年から平成12年(2000年)までの20年間は、少しずつ後ろに(遅寝傾向へと)ズレてきているのですが、平成22年(2010年)は早寝傾向へと、やや戻してきていますね。

テレビ視聴についても見てみましょう。

同調査の中には、テレビやビデオを「見せている時間」という質問項目もあるのですが、フワっとしすぎ(回答と実態がズレる可能性が大きい)かなと考え、ここでは「見せていない」というタフな回答に着目して、30年間の変化をグラフ化しています。

まず面白いのは、昭和55年(1980年)調査には、この質問項目が見当たらないということ。

そして、ここでも就寝時間と同様の傾向が見られます。平成2年(1990年)からの10年間で減った「見せない」派が、平成22年(2010年)には若干ではありますが、盛り返しているのです。

ひょっとして、「意識の高い」保護者が増えてきたのでしょうか。

「◎◎で子守り」はもはや避けられない?

そもそも、一日中テレビやビデオを子どもに見せっぱなしという保護者は少数派です。

「どうしても手が離せない時間帯や場面に限って頼っている」というのが、保護者にとってのテレビやビデオ(そして最近ではスマホやタブレット)の位置づけだと思われます。

同調査でも、平成12年(2000年)からは、その状況を直接問う質問項目が追加されています。
ところが残念ながら、就寝時間や「見せない」比率とは違い、好ましい方向への揺り戻しは見られません。

「孤育て」などの言葉が生まれているように、子育てを取り巻くさまざまな困難さが、「テレビでの子守り」にも影響しているのかもしれません。


令和の「◎◎◎に子守りをさせないで」

ここまで、現時点で手に入る平成22年(2010年)までの数字を使って、「子どもとテレビ」について眺めてきました。

しかし、来年(2020年)以降の同調査では、いよいよ主役が交代し、「子どもとネット」の状況が明らかになるでしょう。
以下の通り、スマートフォンが普及したのは、2010年以降のことだからです。


そして、子育て中の保護者の「手が離せない」が、当面解消しないとすれば…。今、われわれが知るべきことは「テレビとネットの違い」「超えてはいけない一線」「より望ましい使わせ方」などでしょう。残念ながら、アカデミアの知見が固まるには、まだ時間がかかりそうですが、幼保の現場で進む、ICTたいむのような先行実践例には、たくさんのヒントが隠れていると思います。また、筆者も関わっている「子どもたちのインターネット利用について考える研究会(子どもネット研)」でも、未就学のお子さんをお持ちの保護者向けに、オンラインのセルフチェックリストをご提供していますので、ぜひ一度お試しください。また、周囲の方にもご紹介いただければ幸いです。

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