子どものゲームに悩む保護者に伝えたいこと

本コラムは、Advent Calendar 子供とネットを考える 16日目の記事です。他にもいろんな記事が読めますので、リンク先にもぜひGO!

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Photo by Caleb Woods on Unsplash

子どものゲームについての保護者の心配ごと

小学生くらいの子どものゲームについての、最近の保護者の悩みを分類するならば、大きく3つくらいになるでしょうか。

1つ目はもちろん「長時間遊びすぎる」でしょう。

この悩みが無いという保護者はほとんど居ないのではないでしょうか。
いったん始めると、約束の時間になっても終わらない。なかなか寝ない。週末になると夜中まで遊んでいる。学習時間も削るので、学力が低下してくる。身体を使って遊ばないから、体力も落ちてきたようだ。最近、目が悪くなってきたのも多分そのせいだし、このままでは、将来はゲーム依存かも…。

2つ目は、ゲーム内で「暴言を吐かれる」。

他人からというケースもありますし、一緒にオンラインプレイしている同級生にひどいことを言われる、というケースも少なくありません。加えて、わが子の言葉づかいがゲームをしていない時でも悪くなったとか、行動が粗暴になったという悩みも聞かれます。これも、いつもやってるあのゲームの影響ではないのか。

そして3つ目は、やはり「おカネ」の問題。

基本無料をうたうゲームの多くは、あとからの課金でそろばんを合わせるように出来ています。お小遣いを全額プリペイドカードに使ってしまう…くらいは珍しくなく、翌月になって親のクレジットカードに高額な請求が来て驚いたという話も、案外身近に聞かれるものです。

家庭でのルールづくりが大切というけれど

ゲームに限らず、子どものネット利用やデジタル機器利用全般については、「家庭でのルールづくりが大切」と言われます。

ゲームに限らず、楽しいことがあれば時間を忘れてしまうのは、子どもなら当然のこと。おカネのこととあわせて、予めルールをハッキリさせておくことが、前項のような保護者の悩みを減らすためには重要でしょう。

ただし、家庭ごとの生活リズムや教育方針、子どもの気質や好みは実にさまざまですから、ルールについて、「他の誰か」が一律に決めるのはおかしなことです。

ですからたとえば、ゲーム関連4団体が共同で発表した声明(リンク先はPDF)に

多様な成長を阻害するおそれのある一律規制でなく、保護者と相談して未成年者が主体的にルール(約束)を作ることを推奨
ルール(約束)作りにおいては、①お子様と保護者が話し合ってルール(約束)を作ることと、②ご家庭の状況や教育方針に沿って各家庭に最適なものを設定いただくことが重要

との記述があるのも、至極もっともなことだと思われます。

親が一方的にルールを決めて申し渡して、それを素直に守る子どもは、ある一定以上の年齢になると少ないですから、子どもに、ルールづくりのところから参加してもらうことは、実に大切なポイントです。

しかし、ここで困ってしまう保護者は少なくありません。

いったい、どういう話し合いでルールを作れば良いの?…そもそも、わが家に最適なルールって??

たとえば一日あたりのゲームの時間に上限を決めたい。ゲームの楽しさを知った子どもであれば、できれば上限は無い方がいいし、もしルールを決めるとすれば少しでも長い方が良いと思うでしょう。もちろん親の方は、短ければ短いほどいい。

親:一日30分ってことでどうだ? 
子:いや、短すぎるよ。同級生はみんな毎日3時間はやってる。 
親:ちょっと長すぎるなぁ。そもそもみんなって誰だ、3時間ってホントか 
子:◎◎くんも、△△くんも夜11時までやってるよ。 
親:いや、みんなって…二人しかいないじゃないか…。 
子:ま、まあ、他の子たちも30分ってことはないんだよ。せめて2時間はできないと困るんだよ! 
親:2時間でも長いだろ。お父さんが子どもの頃には「ゲームは一日一時間」って言ったもんだ。高橋名人くらい知ってるだろ。ウチも1時間にしよう。 
子:タカハシメイジンって誰?ゲーム実況の人?1時間じゃ全然足りないよ。 
親:じゃあ間をとって1時間半でどうだ! 
これではルールづくりの話し合いではなく、単なる妥協点の探り合いです。

もちろん、保護者が一方的に宣言するよりは、ずっとマシですが、この話し合いで到達した結論には、両者ともに不満が残ることになりがちです。

ルールづくりに臨む前に保護者が考えるべきこと

子どもは日々の遊びを通じて、心身ともに成長していく存在です。ゲームもその遊びの一つでしかありません。わたしたち保護者は、子どもがゲームをすることの何が不満なのでしょうか。何を心配しているのでしょうか。

保護者の中には、ご自身でもゲームを楽しまれる方が少なくありません。親子で同じゲームを楽しんでいるという話も聞かれます。子どものゲームについての悩みが尽きないというご家庭では、保護者がゲームについて、よく分かっていないことが課題なのかもしれません。

一口にゲームといっても、実にさまざまなジャンルが存在します。保護者として許せないのはどのタイプのゲームでしょうか。
たとえば、ゲームの中だったとしても殺し合い、撃ち合いはやめてほしいという感覚は、ごく自然なものです。カーレースならOKでしょうか。パズルゲームはどうでしょうか。ゲームの中で創作を楽しむタイプであれば許せるでしょうか。年齢によっては、ゲーム内で他者との交流要素があるものは心配かもしれません。

子どもがゲーム機で遊ぶようになる前、どのようなオモチャを買い与えるか、保護者はその遊び方をイメージしながら、OKとNGを判断していたはずです。
ゲームについても、それぞれのジャンルについて、保護者自身がどのように考えているのか、その判断基準を子どもにも分かってもらうことが必要です。

また、睡眠不足で健康を損なう、発達に悪い影響があるかもしれない、勉強しないのはマズイ、おカネを使いすぎるのはおかしい、など、ゲーム以前に気になっているポイントについても、どの程度までは許容できるのか、大人の側がよく確かめた上で(おそらく、ご夫婦でのすり合わせも必要です)、子どもにもあらためてその点を伝えることが大切です。

そうした、保護者の側の「原理原則」が明確になっていれば、ルール作りの話し合いも、永遠の平行線から脱することができるはずです。なぜそのルールなのか、背景にある保護者の心配ごとが具体的だからです。そして、そのルールで心配を解消できるかできないか(できたかできないか)という、共通のものさしを親子で持つことができます。


ゲームについて知る手がかりはたくさんある

ふつうのオモチャと違い、ゲームの中身を知ることは難しい、遊び方などイメージできないと思ってしまうかどうかが、ご自身でもゲームを楽しまれる方と、そうでない保護者の最大の違いなのかもしれません。

しかし、たとえば専用機で遊ぶゲームでは、年齢レーティングの情報が必ず付いています。


詳しくは、リンク先の全文を確認いただきたいと思いますが、要は、ゲームの開発元も、審査員も、小学生が遊ぶことを想定しているのは、上記の「A区分」のゲームだけだということです。「B区分」以上については、よくよく確かめないと暴力的だったり、怖かったり、性的な表現が含まれているということになります。スマホやタブレットで遊ぶゲームアプリについても同様で、アプリをダウンロードする前に、アプリストアで年齢区分や、その根拠を確認することが可能です。

さらに具体的に内容を把握したいときは、ゲーム実況動画が便利です。YouTube上で「(ゲーム名) 実況」というキーワード検索をすると、たくさんの動画が見つかります。2,3本閲覧すれば、そのゲームにどんな内容、表現が含まれるのか、おおよそ知ることが出来ます。

アプリストア上の評価も役立ちますし、それだけでは不安という方は、Googleで「(ゲーム名) 評判」のようにキーワード検索するのも有効です。

夢中になっている子どもにゲームをやめさせられるか

子どもからゲーム機やスマホを取り上げれば、自然と早い時間に寝るようになったり、家庭で学習に取り組むようになるでしょうか。もちろん、それほど簡単なものではありません。

ゲームにのめり込んで、生活リズムまで崩してしまった場合には、寝る、食べる、身体を動かすといった基本的なところまで戻った上で、その子の生活全体を見直し、変えていく必要があります。

たとえば、文部科学省のネット依存対策事業では、ゲーム以外のさまざまな体験活動を重視した、治療・回復のためのキャンプが実践されており、その内容は家庭での取り組み方のヒントにもなりそうです。

そこまで深刻でなければ、いま夢中になっているゲームから、もう少しマシなゲーム、保護者の懸念が少ないゲームへと取り替えていくことが、最初の一歩になるかもしれません。

たとえば、スマホアプリに多い「基本無料」をうたうゲームは、専用ゲーム機の「有料のゲーム」より、長時間利用に陥りがちです。また後々、課金トラブルも起きがちです。
ご家庭の事情にあわせて、スマホの無料ゲームをやめ、専用ゲーム機の有料ゲームに切り替えるというのは一つの方法です。

また、ロールプレイングゲームや、パズルゲームなど、一人きりで遊び続けられるゲームは、対人トラブルの不安が無い反面、子どもの時間の使い方という意味での懸念は残ります。

できるだけ、ゲーム機やスマホに閉じず、現実との行き来や、創造の余地が残る遊び方ができるゲームの方が、保護者としては安心できるでしょう。

こうした取り組みの際に、何より大切なのは、保護者がゲームの楽しさや価値を頭から否定しないことです。自分が好きなものを否定する大人の言うことなど、子どもは聞き入れません。

その意味でも、保護者自身がゲームについて知り、理想的には自分でも楽しめる、少なくとも子どもが過ごした時間が無駄ではない、と思えるゲームを選べるようになることは、今後ますます大切になっていくでしょう。そういうゲームであれば、時間を作って、お子さんと一緒に楽しみ続けることもできるでしょう。

ゲームは遊びの一つにすぎません。われわれ大人がその功罪を正しく知り、冷静に向き合えるようになることをめざしましょう。

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