出前授業で小学4年生、5年生、6年生にそれぞれ何を伝えるべきか
進学・進級を控えた三学期は、小学校の児童向け“出前授業”には向いているタイミングかもしれません。
この2月も、ある小学校の4年生、5年生、6年生向けにそれぞれ「ネットやゲームとのつきあい方」についての出前授業(講師はZoom経由で参加し、児童側は集合しているリモート型)を担当させていただく機会がありましたので、その内容を簡単にまとめておきたいと思います。
学年ごとに分けて実施
発端となった校長先生からのご依頼の段階では、4年生から6年生まで一度にまとめて実施、会場は体育館でという想定をしておられました。
しかし、4年生と6年生ではずいぶん利用状況が違うのが普通です。体育館に集合すると、遠い児童からは、プレゼンテーションの投影画面が見えにくいなどもありがちです。
先生方にはかえってお手間をおかけすることを承知の上で、学年別に分けて実施していただけるようにお願いしました。結果、普通教室にて、クラスごと(学年単位)に開催してもらえることになりました。
まずは事前アンケートから
一口に小学生といっても、ネット機器の利用状況や人気のゲームはさまざまです。学年ごとに大きく傾向が変わることはもちろん、地域によっても相当な違いが見られます。彼らのふだんの使い方に合わない話をしても仕方がありませんので、事前アンケートの実施を学校サイドにお願いしました。
質問紙はA4サイズの1枚ペラ。4年生と5年生についてはほぼ共通(使える漢字の範囲だけ調整)、6年生のみ一部の質問を専用のものに差し替えました。PDF三種をお送りし、印刷と配布回収は先生方にお願いします。もちろん、入力集計はこちらで対応し、結果は出前授業の前に、学校サイドにも共有しておきます。
最近では、機器所有状況や利用時間について、自治体単位で調査をおこない、結果を公表されているところも少なくありませんが、好きなゲームの名前や人気のあるユーチューバーといった、ディテールについては、聞き取りの対象外になっていることの方が多いように思われます。いままで事前アンケートを実施してきた学校から、結果の事前共有についてはいずれも前向きな反応をいただいています。
ちなみに今回の4、5年生向けの調査項目は以下のようなものでした。設問4と8のみ自由記述で、残りは選択式です。
- 性別
- ゲームをする/YouTubeを見る時に使うのは、どの機器ですか
- あなたがよく遊ぶのはどのゲームですか
- あなたがYouTubeでよく見るのはどんな動画ですか
- 特に好きなユーチューバーがいる人は、その名前を教えてください
- ゲームをする/YouTubeを見るのは、夜の何時ころまでが多いですか
- 使っているスマホアプリがある人は教えてください
- ゲーム機やスマホの利用についてわからないこと、悩みや聞いてみたいことがあれば教えてください
予想通り、学年ごとにかなり違う結果となりました。その傾向を見ながら、あらためて各学年向けの出前授業の構成を検討していきます。
4年生向けの構成
ゲームとネット動画の長時間利用について、現状を確認した上で、どのような具体的な弊害があるのか、行動を変えるために何ができるのかを伝えることとしました。
- 事前アンケートの結果共有
- 保護者の心配ごとの確認
- 目への悪影響
- 睡眠不足の悪影響
- 睡眠の基礎知識
- 睡眠が足りているかのセルフチェック
- 遊びの必要性
- ゲームやネット動画への偏りの悪影響
- ゲームやネット動画の時間の減らし方
- ふりかえり
最近、ボイスチャットでの暴言が問題視されていることから、その点についても触れました。
5年生向けの構成
ゲームに絞り込み、現状を確認した上で、自分に合ったゲームを選べることの大切さ、ゲームの長時間化の弊害の理解、行動の変え方を伝える流れとしました。
- 事前アンケートの結果共有
- CERO年齢レイティングの内容や方法、意味
- 保護者の心配ごとの確認
- 目への悪影響
- 目を守るための基礎知識
- 睡眠不足の悪影響
- 睡眠の基礎知識
- 睡眠が足りているかのセルフチェック
- ゲームやネット動画の時間の減らし方
- ふりかえり
この学年についても、ボイスチャット問題に触れる時間をとりました。
6年生向けの構成
まもなく小学校を卒業し、中学生になる6年生については、オンラインコミュニケーションに絞り込んだ展開を用意しました。
- 事前アンケートの結果共有
- 小学生と中学生のネット利用の違い
- コミュニケーション関連のトラブル具体例
- 大切にしたいこと
- ネットの特性の理解
- ネット利用時の人間の心理の理解
- トラブル遭遇時の対応
- ふりかえり
リモート型のハンディを補う工夫
実際に学校に伺う出前授業と比べると、講師だけが画面の中に居るリモート型にはさまざまなハンディがあります。
- 講師の存在感が希薄に(プロジェクター投影、電子黒板のいずれの場合でも、特に、プレゼンテーションの画面共有をしている時間帯は、講師の顔はかなり小さくしか映らない)
- お互いに音が聴こえにくい(講師の発声は学校側のセッティング次第、講師には、児童の声はほぼ判別不能)
- 講師から児童の様子が把握しにくい(表情や視線などは、Zoom越しではわかりにくい。マスク着用で一層厳しい)
いずれも仕方ないことであり、講師側で出来る限りの工夫をするしかありません。
今回は
- プレゼンテーション画面共有時に講師の顔も投影(Zoomの「バーチャル背景としてのスライド」機能や、仮想カメラとしてのmmhmmを利用)
- ふりかえりシートを配布、進行途中での記入など児童側の作業を複数回組み込む
- 事前アンケートの共有など自分ごとに感じてもらえる糸口を設ける
といった工夫で補いました。
ふりかえり
一回あたり45分間の出前授業ではありますが、今回の小学校については、事前の準備から当日の対応まで、都合1ヶ月という、スピーディーな展開となりました。
外部講師としては、いろいろと工夫することは当たり前ですが、結局のところ、学校の先生がたのご協力がなければ、どれも実現することはできません。今回も、複数の先生がたにお世話になったおかげで、大きな事故もなく、出前授業を終えることができました。
もっと効果的な手法、コンテンツを提供できるように、これからも研究を続けていきたいと思います。